役者としても活躍中のFPが語る、資産運用のベストプラクティス~松山智彦氏インタビュー

FP&IT事務所DONAKUMACOMMITを運営する松山智彦氏

FP&IT事務所DONAKUMACOMMITを運営する松山智彦氏は、ファイナンシャルプランナーだけでなく、シニアコンシュエルジュ、ITコンサルタント、非常勤講師、そしてなんと「ドナルド松山」という名の役者という複数の顔を持っています。

「経験にムダはない」という信条どおり、他にはない経験と発想をも他の仕事に役立てているという。


そんな松山氏の多様な生き方と、資産運用のアドバイスを伺った。


システムエンジニアからFPへ転身


――松山さんのご経歴を教えてください。

昔は証券会社のシステムエンジニアを約8年やっていましたが、証券不況があり、営業をさせられそうになったので転職しました。

ちょうど1999年にネット証券が雨後の筍のように出てきて、既存の証券会社でネットトレードを立ち上げたいという証券会社があったので、2000年に転職したんです。


さらにネット専業証券に転職し、そこで初めて広報というシステムエンジニアではない仕事を担当しました。

2003年からは、ITの知識を強みにファイナンシャルプランナーを開業しました。


2000~2010年頃の日本のFP業界は、具体的な金融商品を持っていないとビジネスが成り立ちにくく、今のような独立系FPもほんの数人しかいませんでした。

ただ、アメリカでは、フロントでお客様の面談をするFPよりもバックオフィサーのほうが儲かっている人もいるという話を聞いて、それを目指しました。


バックオフィサーというのはお客様ではなくてFPにサービスを提供するビジネスで、フロントのFPから相談を受けて商品を提供するなど、フロントのFPがなかなかできない顧客管理などの事務回りを一括で受け付ける存在です。

50代以上のFPの方はITに強い人が少なかったので、ひょっとしたらビジネスチャンスになるかなと思ったのですが、なかなかうまくいかず、2015年までは、証券の知識をもとにIMFのビジネスをやったり、保険の代理店を数年やっていました。


そのあとは今のスタイルで、セミナーや講師業を中心に相談を受けています。

一時期、日本FP協会の神奈川支部の幹事もやっていて、そこで相談員をやったり、セミナーをやったりしていました。


――システムエンジニアからFP資格をお取りになった理由は?

1998年頃、病気療養をしていたときに時間が余っていたときに資格をとりました。

システムエンジニアだったから当たり前かもしれませんが、証券会社にいたのに金融のことを全然知らなかったので、ちょっと勉強してみようと思ったからですが、本格的に勉強を始めたら面白くて、どんどんドツボにはまってしまいました。


FPの友達もできましたので、いろいろな勉強会をやって、FPビジネスを喧々諤々、模索して、いつか独立して仕事したいと皆が思っていました。


――当時、アメリカのFPの在り方は日本とはだいぶ違っていたわけですか。

独立した頃はFP業界の重鎮の方とよく会って仕事をお手伝いしたりする中で、アメリカへ行ったらこんなビジネスがあると教えてもらいました。

たとえば日本ならIFAでなければダメとか、保険募集人として登録しないとダメで、個人で商品を持つことが難しいのです。


しかしアメリカではFPが自ら、たとえば投信ニューチャイナファンドや保険といった商品を仕入れてお客様に提供しているので、日本のビジネスのスタイルとは違うと思いました。


――アメリカではFPがワンストップで応えられる。

バトラーと言いますが、どちらかと言うとイギリス流なのかな、お客様のお金まわりのバトラーとしてつながっている感じですね。

アメリカの一流の富豪は弁護士と医者とFPを抱えていると言われています。
そこはなかなか日本では難しいですね。


――バックオフィサーとしての仕事は今でもされているのですか。

2010年の前半くらいまでそちらのほうが多かったのですが、その後増えたFPの皆さんはある程度ちゃんとITスキルを持っているので、ニーズは減ってきています。

ときどきお手伝いをするケースもありますが、皆さん、使い方がうまいというか、効率的というか。


――今のお仕事のメインは講座やセミナーなど、お話しすることですか。

バックオフィスが半分、講座半分くらいでできたらいいと思っていたのですが、最近は講座の比重が大きくなっていますね。

相談業務はあまりやっていませんが、案件によっては紹介で行うこともあります。


資産運用、保険見直し、相続対策の3つが私の売りなので、相談も二つ返事で受けます。



資産運用と保険見直しのポイント

資産運用と保険について解説する松山智彦氏

――最近の関心の高まりはどのへんにあるでしょうか。

iDeCoとNISAが多いですね。

iDeCoにはメリットがあるのかないのか、NISAはどのNISAがいいのか、つみたてがいいのか、一般NISAがいいのか、そんなところをお話しすることが多いです。


セミナーでは、損益通算ができないというNISAの欠点を必ず言うのですが、皆さん、メリットばかりに目が行っていて、デメリットを無視しているので、驚かれますね。

運用成績が悪いと、かえってNISAではない方が良いこともあるんです。


――たとえば、どういう運用をすべきなのでしょう。

特定口座で複数の銘柄を運用していくという形ですね。

株式をやれる人は株式をやった方が良いと話すのですが、手を出される方は少ないですね。


運用に慣れている人でないと、投資信託でもびくびくしながらやっている方が多い。

安全性の高い債券系の商品と、イケイケの商品(と言うと語弊がありますが)と組み合わせて、こちらが赤でこちらが黒だったら損益通算して税金が安くなるという話はします。


それと、NISAをどう選ぶかということですね。

新型コロナで経済が打撃を受けているような今の環境だと、NISAはたぶん全然ダメです。


NISAではない一般の特定口座なら、赤字になっても3年間繰り越せるので、1年目がダメでも2年目、3年目で黒を出せば相殺でき、NISAとは異なった税制のメリットがある、というご案内をしています。


――怖がるお客さんが多いので安全なNISAとiDeCoを勧めるFPさんが多いですが。

私はNISAには懐疑的で、株式を運用できる人にとってはメリットが大きいですが、ひょっとしたら投資信託中心の場合はそんなにメリットを享受できないのではないかと思っています。

とくにつみたてNISAは20年だからプラスになりますが、投資信託で積み立てをやっていてそんなに効果が出るのかなと思うんです。


しかも、つみたてNISAは商品が限定されていますので、個別の相談を受ける場合はよく考えるようにアドバイスしています。


――保険の見直しについては、何がポイントになりますか?

最近は少なくなりましたが、5~10年前には、予定比率が良かった昭和60~平成4年くらいに契約した保険を見直したいという相談があり、「いや、やめておきましょう」とお答えしてきました。

そのままにしておくか、見直すとしても全部見直すのではなく、減額か一部解約で医療を中心に見直しましょうとアドバイスしたことが多かったですね。


最近多いのは、がん保険です。

がん保険自体が細分化されている傾向にあるので、がんの治療法で放射線治療を中心にやるか、化学療法をやるか、免疫療法をやるか、どこまでカバーしようかという相談は結構受けます。


お客様の考え方次第で答えが変わるので、どう考えますか、こういう方法でいかがでしょうかとお話ししています。



シニア世代に向けて

シニア世代は生前整理や遺産整理に興味がある

――セミナーの参加者は、相続などが気になるシニア年代がメインですか。

そうですね、生前整理や遺産整理の話に関心のある方が多いようです。


――生前整理というのは、後見人を使わずに全部オープンに進めるのでしょうか。

生前整理と言うとネガティブな感じなので、人によっては「断捨離」と言いますが、自分で必要なもの、不要なもの、人にあげると喜ばれるものに整理しましょうということでご案内しています。


――相続税対策とはまた別の話ですね。

はい、相続税についてはほぼ無視しているというと語弊がありますが、優先順位は高くしていません。

実際に相続税がかかるケースは、それまで4%だったのが27年の改正で8%くらいになり、それでも10%を切っているので、そんなに重要ではないんです。


では何が一番ポイントかというと、揉めるのは、大体、分け方ですので、生前に整理しておきましょうという言い方をするようにしているわけです。

遺言を残したほうがいいんじゃないかと言われる方もいるのですが、遺言を残してもいいのですが、整理できるものは整理しておきましょうよ、と話しています。


――生前に譲渡を行うことによる譲渡税を回避するために、子どもを保険の受取人にするというやり方などもあるそうですね。

それはまさしく、相続税対策ですね。

生前整理と離れて、節税対策と納税対策の話がご相談のメインになるときには、それもひとつの手として考えることはあります。


税対策が必要なほどの財産がある場合には、生前贈与を考えるか、生前贈与のやり方で保険を活用するか、その原資をどこから持ってくるか、などを考えていきます。

加えてそもそも、たとえば事業承継の場合だったら、民法の遺留分の特例を使いながら株式の譲渡をうまく使えないか、ということも考えることはあります。

子どもに売却してしまえば、譲渡税はかかっても贈与税はかからないので、そういう案をいくつか考えます。


これが正解というやり方はなく、生前贈与で保険を使ったり、死亡保険を使ったりという様々な選択肢を示してメリットとデメリットを示して案内しています。


――老後2千万円問題に対する反応は大きかったですか?

私のお客様の場合は、あまり反響はありませんでした。

私の年齢や、それより上の年齢の方は、どこで聞いたのかは分かりませんが、「もともと2千万や3千万は用意するものだと聞いていた、なぜ世間は騒いでいるのか」という反応です。


「もっと多いと思う、2千万じゃ足りない」という言い方をする方もいて、ビビってはいませんでしたね。

その準備ができているかどうかは、微妙な方もいらっしゃいますが。



40代後半から役者稼業を始めた理由

劇団「兎団」26「蟻と太陽」(2019年10月)出演時の松山さん
劇団「兎団」26「蟻と太陽」(2019年10月)出演時の松山さん

――役者「ドナルド松山」として活動を始めたきっかけは。

「あらびき団」という、一芸を持ったパフォーマーを紹介するお笑い番組で、「ロート製薬の目薬の差し方」というあらびき芸を見て、医者の恰好で漫談をするケーシー高峰さんのスタイルで、FPをアピールすることができないかな、と考えたんです。

そんなことを考えていたときに、エキストラの役者をやってみないかと言われて、2011~2012年にエキストラの役者を中心にやっていました。


2011年末にショートムービーのワークショップに誘われて出たら、そこにいた役者さんに声をかけてもらい、今度は小劇場で舞台に誘われました。

そんな経緯で、2012年からはそちら中心にシフトしていきました。


――もともとお芝居には興味があったのですか。

いえ、全然。

興味もありませんでした。


テレビドラマはたまに見ていましたが、当時はバラエティのほうが好きだったくらいで、役者をやるなんてことは考えてもいませんでしたね。

高校時代は放送部でアナウンサーをしていた関係で、演劇部や映画部の友達はいましたから、文化祭で機械操作のお手伝いをすることぐらいありましたが、役者は絶対無理だと思っていました。


――結局、FPと役者活動はまったく関係ないということですか。

FPに関係あることとしては、FP協会取材のFPフォーラムで、人形劇の声優をやったことぐらいですね。

FPフォーラムでは相続対策の芝居をやったりしているところもあるんですよ。


――初めてに舞台に立たれたときは緊張されたのでは。

かなり大変で、すごく演出さんに怒られました。

稽古でも怒られて、本番でも怒られて、じゃあどうして俺を使ったのかと思ったこともありましたが、それでも今まで続いているのですから、やはり何かあったんでしょうね。


こちらが好きなだけでは、使ってくれないはずなんですよ。

自分でもメンバーを集めて、劇団立ち上げたこともあります。


いつもよくこんなことができるな、と思いながらやっているんです。

絶対覚えられへんやろ、と思ったセリフを覚えられたり、自分が呼んだお客さん以外から評価をもらえたりすると、不思議な気分になります。


練習しているときは、どうしてこんなしんどい稽古すんねやろと思いますが、千秋楽を迎えると、「これで終わりか、またやりたいな」と、またやりたくなるんですよね。

主催者に「あそこがよかった」と言われると、やっていてよかったという気になりますので、だから続けられたのかなと思います。


――お仲間はFPとは関係ないのですか?

FPと全然関係ありません。

保険をどうしたらいいかとか、友達がNISAやっているんだけどやったほうがいいかとか、芝居仲間からもたまに相談されますが、キャッシュフロー作れと言われても収入が不安定ですから、役者からの相談はちょっと難しいですね。


――2011年に役者を始めたときは何歳だったのでしょう。

46歳です。

その歳で始めた人は周りにはほぼいないから、イレギュラーにもほどがある人生だと思います。


同じくらいの年齢の方は、昔からやっていた方か、休んでいて復活した人ばかりです。

知人には50代でスキューバダイビングを始めた人もいますが、同世代かちょっと上ぐらいの人は、若いときにバブルを経験しているので、遊ぶことに関しては貪欲なんですよね。


相談に来られる方には、「私の人生はあまり参考にしないでください」と一言添えています。


――最後に、これから松山さんにお会いする方へのメッセージをお願いします。

私はどちらかと言えば、すごく楽観的な考え方を持っているんです。

セミナーでも相談でも、こういう問題点があるので必ず考えてくださいと話しますが、そもそもセミナーに参加される方、相談に来られる方は、すでに何らかの問題意識を持っていたり、行動を起こしたいとポジティブに考えている方です。


なのでそこから、そのポジティブさをいかにして良い方向に導けるかということを一番に心がけています。

考え方がよっぽど外れていないかぎり、「その考え方は間違っていないですよ、ただしこういうことに気を付けてくださいね」と言います。


セミナーではメリットもデメリットも話しますが、どちらも気にしすぎずに、何か得ていただくものがあれば持ち帰っていただきたいと思います。


――迷っている人がいたら、「これに気をつければ大丈夫」とそっと背中を押してあげる。


Webサイトに、「『多様性、独創的、鈍感力』で17年」という言葉を掲げています。

これは、いろいろな考え方があるのでそれを認め合いましょう、受け入れましょうという多様性があるから独創的になる、王道ばかりではなくて裏道も見てみましょうという意味や、考えすぎずに、ときにはリスクも許容する鈍感力を持ちましょうという意味をこめています。

松山さんの著書「失敗を糧にする面白い生き方」(ギャラクシーブックス)
松山さんの著書「失敗を糧にする面白い生き方」(ギャラクシーブックス)


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事務所名: FP&IT事務所DONAKUMACOMMIT
設立: 2003年1月1日
事業内容: 1)ファイナンシャルプランニングに関する事(ライフプラン相談等)
2)資格講座・マネーセミナー講師、大学等非常勤講師
3)ITコンサルタント
4)役者(ドナルド松山)、「7月のミルキーウエイ」主宰
5)脚本(駒鹿日夢生)、製作
住所:〒216-0003 川崎市宮前区有馬5-3-1-403
ホームページ:http://www.eurus.dti.ne.jp/~dona-t/
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取材日:2020年4月3日