高齢化社会で目指す、シニアが生き生きと明るく働く社会~シニアジョブ 代表取締役 中島康恵氏インタビュー

中島康恵氏(株式会社シニアジョブ 代表取締役)
キャプション:中島康恵氏(株式会社シニアジョブ 代表取締役)


企業は慢性的な人手不足に陥っていますが、若手を求めがちなので、60代以上の高齢者にとって仕事を見つけるハードルは高いと言えます。

「日本で一番、高齢者の幸せを作る会社」を目指すシニアジョブは、50歳以上の仕事を探すシニアと、50歳以上歓迎の企業をつなぐ人材サービス提供やコンサルティングを行っています。


代表の中島康恵氏にお話を伺いました。


サッカー選手への夢。限界まで追いかけた

――プロフィールからお伺いいたします。

茨城県ひたちなか市出身で、今28歳です。

大学にはサッカー推薦で、国士舘大学21世紀アジア学部に入りました。


高校のときはインターハイに出場して、サッカー選手になりたいという夢を大学1年まで持っていたのですが、大学に入ったら、みんな上手くて、周りのレベルの高さに驚き、自信喪失しました(笑)。

1年間という制限を自分で設けて、物理的にもう無理というところまで挑戦し、「これで無理ならあきらめよう」と思って、あきらめました。


その1年は大学の寮に入っていたのですが、体育会系の環境で先輩が恐かったです(笑)。

――サッカーに関わる仕事などは考えなかったのですか。

それは考えませんでしたね。

サッカーに関わるなら、選手として関わることしか考えていませんでした。


そこで教師になろうと思っていて、社会科の教員免許を取得しました。

コンビニや居酒屋でアルバイトをしたり、普通の大学生活を送りましたね。


就職活動は一応しましたけど、面白い会社には出会えませんでした。



面白い会社がないなら自分で作ればいい。最終面接で出資を直談判

就職時に起業を決意

――「面白い会社がない」とは、面白い業界がないということでしょうか、面接などで会う人がつまらないということでしょうか。

業種を絞らずにいろいろな会社を見たのですが、両方ありました。

目指している世界観というか、社会にどんな貢献できるのか、どうせなら人の役に立つような仕事をしたいと思っていました。


しかし僕が受けた会社ではなかなか見受けられず、話を聞いてワクワクするような会社がなかったんです。

――そこで起業を考えたのですか。

そうですね、「面白い会社がない」と思って、「だったら嘆くのではなく、面白い会社を作ればいい」と思いました。

結局、内定もとれず(笑)、4年生の12月から事業を始め、翌年8月に会社として登記しましたので、今6期目になります。


当時は起業資金も十分なく、大学生という身分を利用して資金をゲットできる手段はないかと考えた結果、就職活動そのものを役立てるアイデアを思いつきました。

最終面接まで行けば、お金を持っている方に会えますよね。


「これだ!」と思いました。真剣に良いアイデアだと思ったんです。

15社くらい回って16社目で成功し、2000万円出資していただくことができました。

――すごいですね。どんな会社を狙ったのですか。

とにかく規模が大きければキャッシュがあると思って、規模が大きい会社に行っていましたが、今思うと馬鹿でしたね(笑)。

でもその時は必死だったんですよ。


僕が起業した2014年当時は、メルカリやグノシーなど、急成長しているIT系企業がたくさんあったので、ITに行けば成功率が高いのではと考えました。

――最終面接まで行くこと自体、簡単ではないと思いますが。

就職活動の目標が「内定を取ること」から「自分の企業へ出資してもらうこと」になりましたから、当事者意識がすごく生まれて、やるぞ!と、アピールできて突破できました。

就活もやり方によっては上手くできるだということが分かりました(笑)。


そのときの経験は今にも生かせていて、面接をする立場になって、相手が本気かどうか見分けがつくようになりました。



高偏差値の大学で「メガネかけている人」を探した

株式会社シニアジョブ広報部の安彦守人部長
キャプション:広報部の安彦守人部長

――資金を確保した後は、どう動いたのですか。

お金は頂いたけど、仲間がいなかったので、仕事を一緒にする、ITが強い仲間を作りました。

サッカー仲間はいたのですが、仕事でサッカーボールを蹴ることはありませんし(笑)。


そこで偏差値が高いと言われている、いくつかの有名大学の授業を勝手に受けて、教室で隣に座った人、パッと見でメガネかけている学生に、「消しゴム貸して」と声をかけました(笑)。

メガネかけているってことはそれだけ勉強しているんだろうと思ったからですが、今思うとアホですよね(笑)。

――大変なコミュニケーション能力ですね。何人くらいに声をかけたんですか。

40人くらいですね、教室とか、喫煙所、学食とかで。

起業のことを打ち明けて、がっつり話したのはそのうち10人くらいです。


「絶対一緒にやろう!お願い!」「一緒に夢を追いかけよう」という感じで半ば強引に頼みつづけるうち(笑)、某有名大学の学生が一緒にやってくれることになりました。

僕はオフィス兼住居を渋谷の便利なところに借りたため、創業メンバーの多くが一緒に寝起きすることになり、まだ在学中だったメンバーはそこから大学に通っていました。


結局、会社を登記できたのは彼らと出会って半年ほどしてからです。

僕の他、在学中や大学を卒業したての3人で、僕が代表取締役、他のメンバーが取締役でスタートしました。


最初はIT系で、税理士事務所向けにクラウドサービスを提供するシステム開発の会社です。

しかし、2年間で3社しか契約できず、ズタボロでした。


投資してくださった社長はあまり干渉しない方で、どれだけ業績悪くても、「大丈夫だ、絶対に夢をあきらめるな」「好きなようにやれ、生きるも死ぬもお前ら次第だ」と言ってくださいました。

お話しすると元気が出ます(笑)。今も株主です。

――株主構成はどんな感じだったのですか。

その方が、「こいつら面白いから」と他にも出資者の方を紹介してくださって、その方にも投資いただいて、設立できたんです。

僕の両親からも300万円借りました。


2年間は本当に資金的な余裕がなく、白米にふりかけだけのような食事が続くこともありました。

――創業メンバーのご両親にも説明しましたか。

創業メンバーや早期の従業員全員のご両親にお会いして、「こういう会社を作りたいと思っています。

今はだめですけど必ず上場して、この判断は間違ってなかったと言ってみせます」とちゃんと話しました。


最初はちょっと戸惑っていらしたようですが、最終的には熱意を認めていただきました。



起業後2年間はズタボロ。シニア向け事業に転換し、巣鴨でチラシ配り

巣鴨でチラシ配り

――シニア向けの事業に方向転換されたのはどういうきっかけがあったのですか。

会計事務所向けにクラウドサービスの営業をしていたところ、会計士の先生から、「それより人材を紹介してほしい。高齢者でいい、むしろ高齢者がいいんだ」と言われたんです。

そんなことが2件ほどあり、世の高齢者は仕事が見つからないと言っていますが、そうではなく、情報の乖離が生まれているのではと思ったことがきっかけです。


そこで、人材のマッチング事業を思いつきました。

――何から手をつけましたか。

人材紹介事業をするのですから、人材を集めなければなりません。

紹介先は後回しにして、まずは転職したい人を集めようと思いました。


お金もありませんでしたし、シンプルに高齢者がたくさんいる街に行き、どんどん話しかけよう!という作戦で、巣鴨や三軒茶屋など高齢者が多い街に行って、「就職しませんか」というチラシを配りました。

当時のメンバー全員でチラシを配りました。

――ストレートですね。効果はいかがでしたか。

それが効果があり、「仕事探したいと思っていたんだ、どこか見つけてくれ」という声がいくつもありました。

「履歴書送ってください」というと、本当に送ってきてくださる。


そこから登録して頂いて、企業に営業をしましたら、1件、まとまりました。

――IT業からシニアの人材開発へという方向転換には、社員は納得しましたか。

最初は「また言ってるよ」という反応で、戸惑いはあったようですが、僕は必ず成功すると思っていましたので納得してもらうまで話して、ついてきてくれました。

2件、3件と案件がまとまっていくうちに、みんな「これはいけるかもしれない」っていう空気にになっていったんです。


やはりチラシ配布は限界がありましたので、新聞広告を出したところ、60代前半の方など応募者が一気に30人ほど増えました。

登録にいらした方がスマホでゲームやLINEをしている姿を見て、「シニアの方もスマホやインターネットを活用している」という仮説を立てました。


より求職者を集められるかもしれないと考えて、インターネット広告に切り替えましたところ、50代、60代の方が10倍以上集まりました。

もともとIT事業をしていて、そこは得意でしたから、今後もネット上で展開しようと考えました。



真剣に取り組めばシニアは真摯に聞いてくれる

シニアジョブのWebサイト
キャプション:シニアジョブのWebサイト

――登録者と皆さんとでは、世代間ギャップはありませんでしたか。

正直、最初は僕らの話など聞いて頂けるのかなと心配だったのですが、ビジネスの世界では、真剣であればあるほど年齢は関係ないことを実感しました。

僕たちがご紹介させて頂いているシニア世代の方々は、皆さん真摯に受け止めて、話もきちんと聞いてくださいます。

――皆さんにはどんな指導をされているのですか。

シニアの就職で一番の難関は書類審査で、年齢と経歴だけを書いても落とされてしまいます。

書類が通り面接まで行けば、熱意や人柄も伝わり、決定率も高くなります。


だからまず履歴書が通るようにサポートをしています。

例えば会計事務所で必要とされる経歴はどんなものか、どのように履歴書に書けばいいのか。


そういうサポートをやればやるほど、人材コーディネーターとしてのノウハウが当社に蓄積されます。

――現在の登録者数は何名でしょうか。どのような経歴の方が多いのですか。

登録者は2019年12月末現在、22,699人です。

現在は、どちらかというと専門的なスキルのある方を中心にご紹介しています。


8割が建設業の施工管理や、会計事務所の事務員、医療、介護、調理師、自動車整備士などの専門職です。

――始められた当時に比べて、シニアの雇用状況はだいぶ変わりましたか。

だいぶ変わりましたね。

需要は年々高くなっています。


最近では「2000万円問題」もありましたし、50代の方は、老後に備えて転職を考えている方が増えていますね。

企業様も増えてきており、数年前は登録企業を集めるのは大変だったのですが、今では高齢者を採用したい企業が毎月50社ほど登録いただいています。


中小企業が中心で、まだ大企業には高齢者を積極的に採用したいというニーズは低いですが、それでも徐々に増えてきています。

限定的ですが、資格を持っているような優秀な高齢者は、奪い合いになっています。


シニアの数も限られていますし。一部の資格についてはすぐに決まります。

――転職後の年収についてはいかがでしょうか。

介護業界などでは難しいですが、全体的に上がってきていますね。

――やりにくい面、壁もあると思いますが。

社会的には、まだまだ高齢者の雇用が受け入れられているようにはなっていません。

企業側でも、例えば社長が40代だったりすると、60代の方に来ていただいても、言うことを聞いてもらえないんじゃないかという先入観がある場合があります。


高齢者だから、若いから、という視点で捉えないで欲しいと思います。

我々は、若い方もシニアも変わらないと思っています。


若くたって、人の話を聞かない人は聞きませんから(笑)。

当社にも65才以上の社員が3名おりますが、高齢者だからという目では見ていません。



シニアの方々が生き生きする社会を。人の役に立つことしかやりたくない

シニアジョブの企業理念
キャプション:シニアジョブのWebサイトより

――シニアの方に伝えたいことは。

50代以上で転職はどうなんだろう、とか、仕事が見つからないとあきらめている人がすごくたくさんいます。

気持ちは分かりますが、今は50代以上でも転職したいと思ったら転職できる市場があります。


仕事をしたいという気持ちを諦めないで欲しいと伝えたいですね。

――働き方改革の影響は感じますか。

各企業が労働時間を減らそうとしている姿勢を感じます。

労働時間が長いと身体への負担が増えますから、シニアにとっても良い方向だと思います。

――今後、シニアの労働市場は広がっていくでしょうか。

今後は若い人が減り、高齢者は増える一方ですから、仕事も増えていきます。

その傾向は企業からの問い合わせ件数など数字に表れていますし、毎月、実感しています。


派遣と紹介では、紹介の方が多く、最初は10%未満でしたが、今は13~14%の決定率で、紹介料も上がってきています。

――お金に関して、シニアの皆さんはどういう意識をもっていますか。

シニアの皆さんの行動は一律に考えられるものではなく、お立場というか預貯金の額によります。

50代で転職をする方の動きを、預貯金が十分にある60代の方が真似をすることが良いとは限りません。


働くことはお金をためることに直結しますが、仕事が見つからないからお金をためるのは無理だというふうには思わないでほしいです。

今の市場は大丈夫です。


弊社では一番上で、76才の方へお仕事を紹介しました。

――今後、新たなサービスも考えていますか。

シニア向けの婚活サービスなど、人材業以外の展開も考えています。

配偶者が亡くなられていたりして、平均年齢60代の登録者の3割が未婚の方ですから、シニア婚活市場も大きくなっていくと思います。


我々のビジョンは、シニアが生き生きと活躍できる社会をつくるということですから、婚活以外にも、シニア向けオンライン教育事業、国内旅行サービス、終活サービスなど、生活にかかわるものはすべて考えていきます。

登録頂いているシニアの皆さんの男女比を見ると、若干男性の割合が高いということもあるので、とくに婚活サービスのニーズは高いと思います。

――いつのまにか、シニアをメインターゲットにする会社になりましたね。

人々の役に立てること以外はやりたくありませんし、世界で一番、シニアの可能性を信じています。

日本は世界で一番高齢者が多い国ですし、シニアの皆様が生き生きした社会を作ることは面白いと思います。


シニアにターゲットを絞って、いろいろな生活のインフラになるようなサービスを提供していきたいと思います。


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社名 株式会社シニアジョブ
代表者 代表取締役 中島康恵
1991年生まれ。茨城県出身。サッカーに打ち込み、J1ユースチームでの活躍から一転、学生起業家に。2014年シニアジョブ設立。
所在地 東京都新宿区大久保1-14-15 三辰ビル7F
ホームページ シニアジョブ
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取材日:2020年3月10日