中小企業の事業承継・相続問題のプロとしてオーナーに直言~税理士法人アイユーコンサルティング 岩永悠氏インタビュー

税理士法人アイユーコンサルティングの岩永悠代表
税理士法人アイユーコンサルティングの岩永悠代表


超高齢化社会に突入した日本において、オーナー企業の事業承継、相続問題が深刻さを増している。

会社が利益を確保して株価が上がれば望ましいが、オーナーが死去し、子が株式を相続する際に多額の相続税を支払うジレンマに陥るケースが多い。


福岡や東京などに事務所を構えている税理士法人アイユーコンサルティングの代表、岩永悠氏は、事業承継、M&A、相続の専門家として、「中小企業オーナーに特に厳しいことを言わなければならない」と語っている



2019年に税理士、公認会計士、行政書士の会社をグループ化


――ご経歴を教えてください。

23歳で税理士試験に合格し、中堅・大手税理士法人で実務経験を積み、29歳に独立し、岩永悠税理士事務所を立ち上げました。

2015年4月に法人化し、税理士法人アイユーコンサルティングと改称し、新たなスタートを切りました。


その後、北九州、埼玉県川越市、池袋、広島にも事務所を開設しています。

2019年にグループ化し、ホールディング会社、公認会計士事務所、行政書士事務所、M&Aなどを中心に行うコンサルティング会社を設立しました。


――中小企業のオーナーが高齢化する中、貴法人の強みは事業承継と相続とのことですが。

事業承継は税理士法人の核となる業務です。

我々は企業価値を下げず、いかに企業の株価を下げるかという命題に取り組み、中小企業オーナーの節税対策をサポートしています。


肌感覚で申しますと、2代目、3代目で代を継いだ経営者は合理的に考える傾向が強く、私たちの話に真剣に耳を傾けてスムーズに事業承継するための対策を早くから打ちます。

その一方で、創業者は会社に愛着があるためになかなか代を譲りません。


そこで、オーナーの高齢化という課題が立ちふさがっているわけです。

ここ5年ほどは、中には息子が継いでくれない、あるいは創業者から見て適切な後継者がいないということで、M&Aという選択肢をとる案件も活発になっています。



親族内承継は人的承継が進む一方、課題も


――親族内承継ではどんなケースが多いのですか。

オーナーが親族内承継を決断すると、10年間のスパンを決めさせていただきます。

日本の場合は人的承継はスムーズに進みます。


つまり社長が会長になり、専務であった息子が社長になるのですが、どちらも代表権を保有しており、株式の大多数、人事権、社長解任権も会長が変わらずに握っているケースも多いです。

周囲から「社長」と言われることで、地位が人を育てるという意味では大事なことですが、これでは「専務」が「社長」になっただけで実質何も変わっていません。


社長が営業成績を伸ばして売上を伸ばし、株式の評価額を上げていくと、株式の大多数を保有している会長が亡くなった時、社長が相続税の支払いでとても苦しむことになります。


――親と息子の2人とも代表権を保有している2人代表制を採用する中小企業は、たしかに増えていますね。

ここが一番の問題です。

会長に言わせると、「息子が勝手に会社を売るかもしれない」「息子が勝手に新事業を立ち上げるかもしれない」と疑えるので、「だから株の大多数はオレが持っていないといけない」ということになります。


そういうときは、拒否権付株式、別名「黄金株」と申しますが、その「黄金株」を定款で設定することを提案します。

これにより、「会社を売る行為を拒否」「役員報酬を決めることを拒否」など、たった1株で議案を拒否する権利が与えられます(ただし、提案する権利はありません)。


かりに50%以上の株を息子さんに渡しても、会長が「黄金株」を持っていれば、社長が暴走しても議案をストップすることができるわけです。


じつは税理士は会社法を勉強していないので、このあたりのことを知らない人が多いんです。

そこで私どもは司法書士ともパートナーを組んで、事業承継のサポートをしています。



望ましい親族内継承とは?

「親族内承継は10年のスパンで提案します」と語る岩永氏
「親族内承継は10年のスパンで提案します」と語る岩永氏

――具体的な事例を教えてください。

1社しかない場合には、会長が「代表取締役」を降りないと社長は本気になりませんから、先ほど言った「黄金株」を提案します。

会長は会社の経営がしたいというよりも、社長に会社を私物化されたくないという思いが強いんです。


代表権を外れれば金融機関からの保証人からも外れ、退職金も払えますから、その期だけ赤字を出します。

赤字になると、翌期の株式は当たり前ですが評価額が安くなります。


渡し方は、贈与か譲渡かその際に考えますが、会長から権限とともに株式を社長に譲り、「黄金株」を発行し、会長に渡せば、名実ともに社長が経営を担うことになります。

これがオーソドックスな親族内事業承継方法です。


グループ会社や資産管理会社がある場合はもっと簡単です。

たとえば、オーナーがセメント会社と不動産管理会社の2社を保有し、セメント会社が5億円、不動産会社が2億円というのであれば、合計7億円の評価です。

この場合、相続税が3.5億円かかります。


そこで不動産会社を親会社、セメント会社を子会社とする組織再編します。

親子間にすると、2社の会社の評価額が7億円から4億円に下がります。

この場合、相続税が2億円になり、節税にも効果があります。


これも株式とともに後継者にスムーズに承継させる手法の一つではあります。

この場合、オーナーは、子会社の代表取締役会長から退任してもらいます。


そうなると会長は子会社の保証人から外れますので、必然的に社長が会社の借金の保証人になり、責任ある立場になります。

社長は経営を誤ると自己破産せざるを得ない立場にありますから、経営に対する真剣度も変わります。


社長は権限があるわけですから、同時に責務を負う立場であるべきです。

じつは顧問税理士は数字しか見ていませんから、事業承継の話はされない方が多いのです。


私たちのような事業承継に強い税理士が金融機関等の紹介でオーナーに直言すると、最初は怒る方もいらっしゃいますが、最終的には意外と気に入られて、本気で事業承継に取り組まれます。


興味深い話があります。

私がある税理士法人に勤めていた頃、事業承継を提案した案件がありましたが、延び延びになっており、私が独立してからその方が事務所にいらっしゃって、あらためて、ついに7年越しの事業承継を決断されたという例があります。



会社の売り頃を間違えると買いたたかれるケースも

「M&Aは全国の士業のネットワークを活用し、きめ細かい提案をしています」と語る岩永代表
「M&Aは全国の士業のネットワークを活用し、きめ細かい提案をしています」と語る岩永代表

――M&Aの買い手というのは、結構つくのでしょうか。

皆さん、状況が落ち始めてからM&Aの決断することが多いのですが、それだと買いたたかれる事例も多く、最悪、救済型のM&Aになってしまい、事実上、値段が付かなくなります。

具体的には吸収合併のようなケースになり、借金は引き継ぐけれど、株価はつかない状態です。


無料でのM&Aもかなりあります。

しかし、トップは、従業員の雇用のことなども考えなければなりませんし、値段がつけばマシ、と決断されるM&Aも多いですね。


――貴法人ではきめ細かい提案もされているということですが。

今全国で問題となっている後継者問題を抱える企業のために、税理士・会計士が中心となって2014年に発足した「虎ノ門会」があります。

全国の優良な税理士法人が会員で、事業承継問題に積極的に対応している・対応したいと思っている方々のみが参加されています。


地元の企業には売りたくない、他県に売りたいという要望もあります。

たとえば東京で建設業を営んでいて、九州に進出するための足がかりとして福岡の建設会社を吸収する例もあり、逆もしかりです。


他県ですと変な噂が立たないこともあるので、小規模の企業体の場合は税理士が一番身近な存在であることから、「虎ノ門会」でのネットワークを活用して情報共有をし、会社のM&Aをサポートしています。

ここでの売買金額の規模感は2億円よりも低く、さすがに1,000万円未満はありませんが、5,000万円~1億円の間が多いです。


――オーナーが会社の事業承継やM&Aを決断するときに何か助言されることはありますか。

会社の未来を一緒に考えさせていただくとき、オーナーや社長は自分がずっと元気であると勘違いされていることが多いですが、残念ながら、死はいつか必ず訪れます。

私も相手が70代の社長であれば、「10年間は大丈夫でしょう」と言いつつ、「でも30年後は難しいですよ」と率直に申し上げて、ようやく社長も考えてくれます。


オーナーは、じつは「80歳まではイケる」と内心思っているのです。

そこで私も、「30年後にはこの会社が消滅してもかまわないなら、社長を続けても結構ですが、30年後もこの会社を残したいのなら、事業承継やM&Aを真剣に決断しなければ潰れますよ」と率直に厳しいことを言います。



改正相続法施行後は、相続に強い税理士が求められる


――相続については。

2015年に相続法が改正され、課税割合が4%から現在は8%に上がりました。

毎年、約130万人亡くなっていますが、相続税申告を要する人は約11万人です。

増えた層は中間上位層です。


もともとの富裕層は税理士の知り合いも多いのですが、今回、新たに課税対象になった方は税理士の知り合いはあまりいない層です。

改正相続法は、公務員で定年退職まで働き、一軒家を保有すると課税対象になるレベルですから、相続に強い税理士に頼むかどうかで相続税の申告が変わります。


これからは相続に強い税理士が求められます。

本法人も相続に強いことをアピールしています。


――これから起こる大きな動きはありますか。

80歳を過ぎると、4人に1人が認知症になり、当たり前ですが、家も売れないなど財産が動かせなくなります。

ですから、相続対策として民事信託が流行ると思います。


認知症予備軍の財産を信託することで、受託者が動かせるようになります。

これからの日本は超高齢社会に移行し、認知症も増えますので、税理士も民事信託については正確な発信につとめていかなければならないと思っています。


税理士法人アイユーコンサルティング集合写真
税理士法人アイユーコンサルティング集合写真


――生産緑地には「2022年問題」と呼ばれる問題がありますが。

2022年、一斉に生産緑地の指定解除がなされることになります。

これにより農地から宅地に転用され、一般的にはアパート、マンション等を建設されることが想定されます。


かりに借金をして10億円の建築物を建てると、直近の評価額は10億円になりますが、その後評価額が下落し、7億円の価値に留まれば、結果、3億円の負債を追うことになります。

これまで地主のほとんどの方が、この手法で相続税対策をしていました。


しかし日本経済はシュリンクし、移民も受け入れていませんから、それほど多くの住居を必要としなくなりますので、この手法の相続税対策ができなくなります。

昔は農地を売って都心のタワマンを買ったら、買い替え特例が使えて、相続税をほとんど払わずにすみましたが、この買い替え特例も厳しくなっていますから、不動産オーナーにとっては今後厳しくなる時代を迎えてくると思います。


残す財産、残さない財産を明確に分けて、不動産を売っていかないと、土地だけ残って相続税が払えなくなることになりますから、生前に細かくシミュレーションしなければなりません。


――今、中小企業オーナーは、新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言などで悩んでいると思いますが。

今はウェブなどを除いて、全経済・業界が止まってしまった状況にあります。

税理士の立場では、持続化給付金など国の支援を最大限に活かし、金融機関からお金を借りるだけ借りて、今を耐え忍ぶべきです。


逆転の発想で、お金が借りにくかったところでも現在は借りやすくなっている金融機関もあります。

軍資金があれば、次の事業ができるという中小企業もありますので、頑張ってほしいです。

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プロフィール

岩永悠(いわなが ゆう)
1983年長崎県生まれ。西南学院大学経済学部卒業。26歳で税理士資格を取得。九州の中堅税理士法人に勤務後、国内大手税理士法人の福岡事務所設立に参画。2013年岩永悠税理士事務所として独立、2015年税理士法人アイユーコンサルティングに改組し法人化、2019年株式会社IUCG(アイユーコンサルティンググループ)、株式会社アイユーミライデザイン、アイユー公認会計士事務所を設立し、グループ化を進めている。『高付加価値サービスの創造・提供』を理念に掲げ、300社を越える中堅・中小企業の事業承継サポートを提案・実行。組織再編税制を活用した事業承継対策を強みにしている。また、中堅・中小・ベンチャー企業の成長支援も積極的に行い、IPOコンサルも得意とする。アイユーコンサルティンググループの代表として、日本一の資産税総合ファームを目指す傍ら、金融機関やコンサルティング会社主催の相続・事業承継セミナーや税理士向けセミナーも多数行うなど、業界活性化のために全国各地で活躍中。

社名: 税理士法人アイユーコンサルティング
代表者: 岩永悠
所在地: 〒171-0022 東京都豊島区南池袋1丁目8-1 千登世橋ビル2階
電話: TEL:03-3982-7520  FAX:03-3982-7521
事業内容: 相続対策、事業承継対策、医業支援、税務顧問、組織再編コンサルティング、経営改善、資金調達、各種税務申告(相続税、法人税、所得税、消費税、地方税)
コーポレートサイト: https://www.taxlawyer328.jp/
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取材日:2020年5月14日