FPの役割はお金で人生を診断し、「人生いろいろ」を可視化すること~サマーアロー・コンサルティング代表 浦上登氏インタビュー

浦上登氏(サマーアロー・コンサルティング代表)
浦上登氏(サマーアロー・コンサルティング代表)

国内重工業界のトップクラス企業から、ファイナンシャルプランナー(FP)に転身したサマーアロー・コンサルティング代表の浦上登氏は、資産運用・投資、住宅購入の相談やセミナー講師も務める。

駒沢女子大学で特別招聘講師をつとめ、「金融リテラシー」を講演し、給与明細書を通じて学生と社会人の違いを教えている。


下町出身で、個人の金融に関する様々な相談に乗る親しみやすいFPとして知られる浦上氏にお話を伺った。


大手重工業の保険業務からFPに転身

――事務所開設に至るまでの経緯は。

サラリーマン時代は大手重工業企業で、海外ビジネス中心の業務、具体的にはプラント工事や海外で会社設立などに携わりました。

その後はグループ内の保険関連部門に異動になり、12年ほど保険業務に携わり、その際にFPの資格を取得して、保険、税金、相続、住宅ローン等お金のことを勉強しました。


サラリーマン引退後は独立してFPの仕事をすることになり、サマーアロー・コンサルティングを起業して代表をつとめています。


――重工業界出身というのは、FPとしては異色の経歴ですね。

海外プラントの仕事でも、保険業務があるんです。

外国にプラントを運搬する際には海上保険、現地でプラントを組み立てる際には組立保険などがあり、この保険業務も担当していました。


プライベートでも相続や住宅購入を経験し、保険関連部門での実務も踏まえてFPの資格を取得した経緯もあり、退社後は本格的に金融の世界へと乗り出しました。


――駒沢女子大学でも教鞭をとられているとのことですが。

海外のプラント輸出の実務について教えています。

講義を担当している教授に、「女子学生は海外のプラント輸出のことなどあまり関心がないのでは?」と申し上げたのですが、「そんなことはありません。ホテルや旅行業界を志望している学生も多く、海外全般のことには関心がある」ということでしたので、講師を務めることになりました。


もうひとつのテーマは、ちょっとおこがましいかもしれませんが、「学生のための金融リテラシー」を教えています。

社会人と学生の違いは、「自分でお金を稼ぐこと」だと女子学生たちに説明しています。


社会人になると、会社から給料をもらい、また逆に税金、社会保険料を払うことになります。

「お金を稼ぐ主体」として社会に組み込まれることが、社会人なのです。


会社から給料が振り込まれるとともに、給料明細書をもらいますが、この給料明細書を具体的な事例として、税金や社会保険の種類や加入する意義を説明します。


学生は病気になっても親の扶養家族となっていますから、それまでは親が加入している健康保険で通院してきましたが、社会人になると扶養家族から脱し、独り立ちして、自分が健康保険に加入することになります。

お金は誰にとっても絶対に必要なものですが、日本では、お金のことを面と向かって話すのははしたないことというマイナスのイメージでとらえられる風潮が強いです。


学校ではほとんど教えてもらう機会がありませんから、お金について肝心なことを理解していない方がたくさんいます。

まず、なぜお金が必要なのかということから教えてあげないと、金融最前線の情報を説明したところで、「どうしてそんなことを習わなければならないの?」と学生に受け止められてしまいます。


そこで学生と社会人の違い、そしてお金の大切さを理解できる講座を行っています。

日本FP協会でも「ファイナンシャルリテラシーを教えることは大事です」と常々言っていますので、こうした講義はFP協会の考えに沿っているといえます。

浦上氏が講師を務める駒沢女子大学
浦上氏が講師を務める駒沢女子大学



ポリシーは顧客利益のアドバイスを第一に

――浦上さんのポリシー、理念などを教えてください。

顧客の利益を考えてアドバイスすることを、第一にしています。

銀行、保険代理店や証券会社に勤務している人のアドバイスは、どうしてもフィーを得るため、金融商品を売るためのものになってしまいがちです。


そうではない独立系FPとして、特定の金融商品を売るためではなく、お客様にとって一番有利な金融商品とは何か、またどういう行動をすればベストであるかを説明することが責務だと思っています。

かりに自分がその立場だったら、どのように行動し、どの金融商品を購入するだろうかと、自分ごととして考えつつ、お客様にご提案することを心がけています。


――具体的にはどのような提案をされるのですか。

お客様からご相談を受ける際には、総合的にアドバイスできるように、顧問契約を結びたいと考えております。

顧問契約を結べば、年齢、家族構成、収入、支出、貯蓄残などをもとに現在から死亡するまでのお客様のライフプランを提案できるようになります。


昨今は、人生100年時代と言われています。

100歳までのプランを念頭に、現在の給与がいくらで、将来の給与を予想し、住宅は何歳くらいで建てるか、お子さんはどこまでの教育を受けさせるか、ローン金額も踏まえて、65歳で公的年金を受け取ることなどを想定すると、かなり細かな部分まで人生設計を落とし込むことが可能になります。


ポイントは毎年の「収入-支出」の積み重ねである金融資産残高=手持ち資金がプラスになるか、マイナスになるかということです。

最近はリタイア時に2千万円が必要であるという「老後資金2千万円問題」が話題になりました。


つまり、リタイア時に2千万円の資産がないと、手持ちの資金はいつかマイナスになってしまうという問題提起です。

FPは個人のライフプランを作ることで、30代の人でも、定年間近の人でも、年金をもらいはじめる65歳の方でも、すべての人生をお金ではかっていきます。

老後資金2千万円問題


――人生こうありたいと願っても、お金がなければできないこともありますね。

ある意味、すごく残酷なことです。

若い方が今の収入と支出を計算し、子どもをもうひとり育てたいと願っても、現実には子どもを養育する学費等を計算すると、2千~3千万円が余分にかかることになります。


ライフプランに子どもひとりを組み込むと、場合によっては、どこかの時点でマイナスになってしまう可能性があるのです。


――収支がマイナスになると大変ですね。

大変です。

ライフプランを細かく設計していくと、「自分はこういう人生しか送れない」ということが可視化されてしまうのです。


たとえばあるご夫婦ふたりの生活を、現在の収入をもとにライフプランを試算したとします。

すると、「住宅はこのくらいまでのローンしか組めません、お子さんはおひとりまでで、学校は大学まで通学させるなら国公立が必須で、私立の一貫校に進学させるのは無理」というような結果が露骨に見えてきてしまうのです。


自分が若いころ、もしこんなふうにFPから数字をもとに説明されていたら、さぞかしへこんでしまっていたことでしょう。

数字はそれだけ正直で、残酷なものです。



ライフプランで最も重要なのは「生活費」

ライフプランを間違えると老後は収支マイナスになるかもしれない
ライフプランを間違えると老後は収支マイナスになるかもしれない

――ライフプランを作るときに重要なポイントは何でしょうか。

老後資金や住宅ローンばかりに目がいきがちな人が多いのですが、じつは一番大きいのは、生活費です。

たとえば、それまでは月20万円に収まっていた生活費が膨れて、月25万円になると、将来にわたって影響することになります。


ひと口に生活費と言っても、食費、光熱費、家賃、医療費、通信費と本当にさまざまで、多岐にわたるもので、じつは人生の支出の半分は生活費だと言われています。

ですから、生活費の支出によって人生が決まるといっても過言ではないでしょう。


収入が多く、ゆとりのある人は問題がありませんが、収入がギリギリで厳しい方は、収入に合わせて生活費を切り詰めるしかありません。

皆さん、それをうすうす理解されているのですが、口に出したり、文章に書いたりする人はごくわずかです。


昭和の池田勇人首相は「貧乏人は麦を食え」と発言して物議をかもしましたが、今の政治家や経済人は、そんな発言は決してしません。

しかし、収入に合わせて生活費を切り詰めるということと池田首相の発言は基本的に同じことで、人生の真実を言い当てていると思います。


FPをやっていると期せずしてそんなことも見えてくるようになりました。


――ライフプランとは、現実を提示することなのですね。

ライフプランを作っていると、お客様に現実を申し上げないと前に進めなくなります。

大袈裟と思われるかもしれませんが、「あなたは健康」「コレストロールが高い」と医師が診断するのと同じように、FPも金銭面からお客様の人生を診断する役目を帯びています。


ただ所詮は数字ですから、お客様の収入が突然増えたり減ったりすることもあり、長期的なライフプランも作っても決して完ぺきなものではありません。

あくまでも現在の収入から考えれば、今後のライフプランはこのようになるということを示すことに意味があります。


あなたの人生は現状こうですが、ここを改善すればよくなりますということを積極的に提案する姿勢がFPには必要です。


――年配者からのご相談は、どのようなものが多いですか。

年配者もご相談に見えますが、人の境遇は様々ですから、富裕層の方や、将来相続での収入を期待できる方もいらっしゃいます。

そういう方の場合は、余剰資金をどのように運用するべきかという話になり、株や不動産投資、投資信託の話がメインになります。


投資の話は長期的に見ればわりあい気楽にできますが、親と子どもの面倒を両方見る境遇にある方の場合は、定年退職して給料が減額するとやっていけなくなることもあります。

FPは多くの人生の境遇を見る、なかなか厳しい仕事です。


いい加減な提案や間違った提案はできませんので、責任を感じます。

FPの仕事を通じてあらためて悟ったことは、本当に「人生いろいろ」ということです。



セミナーで「離婚の経済学」が好評

浦上氏は年配者の相談も活発に行っている
浦上氏は年配者の相談も活発に行っている

――セミナー講師も務められていますが。

FPの相談だけではなく、セミナー講師も務めています。

あるとき、「離婚の経済学」をテーマに3時間ほど講演しました。


離婚というテーマには愛憎こもごものことから慰謝料の話までありますが、FPは夫婦の愛憎に踏み込むような有効なアドバイスは何もできませんから、そういったことは置いておいて、「離婚の損得」というものを経済的に考えてみました。

離婚をすると財産分与をしなければなりませんし、養育費や、別居中の相手や未成熟子の生活費など生活維持に必要な婚姻費用を負担しなければなりません。


これが5~10年と続くと、場合によっては数千万円になる事例もあります。

高額の給与をもらっているサラリーマンや事業主の場合は、かなりの費用を負担することになり、奥さんはその分、楽になります。


世間では、シングルマザーは大変ということばかり強調されますが、男性の側にも大変な人がたくさんいます。

ごく一般的な夫婦での損得を考えると、離婚は損になります。


たとえば家が持ち家だとしても、半分にするために、夫婦のいずれかが出て行き、家を借りなくてはなりませんし、財産も半分になり、年金も分けると絶対に損になります。

この講演は好評だったのですが、思うことがひとつありました。


FPの役割とは、やはり数字で割り切ることだということです。


――最後に、FPのあるべき道は何だと思われますか?

税理士や弁護士は特定分野に特化していますが、FPの守備範囲はそれにくらべるとかなり広いものになります。

具体的には、保険、ライフプラン、税金、相続など、個人のほとんどの経済的な問題をFPの業務はカバーしています。


そのため、私も守備範囲を広くし、お客様のニーズにより幅広く応えていきたいという信念のもとに、経済的なコンサルタントとして邁進していこうと考えています。


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社名: サマーアロー・コンサルティング
所在地: 神奈川県川崎市麻生区
代表者: 浦上登

<プロフィール>
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
早稲田大学卒業後、大手メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超える。その後、保険代理店に勤め、ファイナンシャルプランナーの資格を取得。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表、駒沢女子大学特別招聘講師。CFP資格認定者。証券外務員第一種。Yahoo Newsに掲載のファイナンシャル・フィールド「暮らしとお金を考える」にお金に関する記事を連載中。FPとして種々の相談業務を行うとともに、いくつかのセミナー、講演を行う。
趣味は、映画鑑賞、サッカー、旅行。映画鑑賞のジャンルは何でもありで、最近はアクションもの、推理ものに熱中している。

E-mail: nuk@ya2.so-net.ne.jp
ホームページ: https://briansummer.wixsite.com/summerarrow

提供業務:
■各種相談(パーソナルファイナンスに関する各種相談)
ライフプラン・不動産一般・住宅購入・資産運用・投資・保険(社会保険・商業保険)・老後・年金・税制・相続・贈与など
■ファイナンシャル・プラニングに関する各種講演・セミナー等
■FP塾(ファイナンシャル・プラニングに関する耳より情報をお知らせします)
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取材日:2020年4月10日